カスタマーサクセスの効率を上げる方法:カスタマーオペレーション

 by 弘子ラザヴィ

 

カスタマーオペレーション

 

カスタマーオペレーションと呼ばれる部門ないしチームをもつ米国企業は多いです。

 

当サイト Customer Success Japanで昨年、カスタマーオペレーションに関する投稿「カスタマーオペレーションとは?: ROIを飛躍させる顧客データの魔術師」を紹介したところ、外資系企業の日本オフィスで働く方から特に強い反応がありました。

 

カスタマーオペレーションとは、簡単に言うと、社内に存在するあらゆるカスタマーデータをフルに活用することをミッションとし、データの分析や関連システムの管理・運用、カスタマーサクセスに関わるプロセス設計や人事回りの業務をする人たちです。通常、彼らはカスタマーとは接触せず専業のバックオフィス機能として活躍します。データサイエンティストなどが働くチームでもあります。

 

セールスオペレーションという言葉を耳にしたことのある人は多いでしょう。外にでず社内にいて営業関連のデータ分析などを専担し、外にでる営業と分業して営業効率を上げる存在です。カスタマーオペレーションはセールスオペレーションのカスタマーサクセス版です。

 

カスタマーオペレーションがいい仕事をすれば、カスタマーサクセスマネジャー(以降、CSM)はカスタマー接点で価値あるいい仕事に集中できます。そうしたカスタマーサクセスがハブになれば、更に営業やプロダクトにもよい効果が波及します。

 

カスタマーオペレーションをいつ置くべきかは、CSMが2人以上になったら専任1名とか、CSMが5人以上になったらチームが必須など、色いろな意見があります。大切なのは、具体的な人数や役割を決める前に、自社でカスタマーオペレーションをもつことの目的とその成果を明確にし、「私たちは今カスタマーオペレーションが必要だ」という認識を本当に必要なタイミングで正しく判断することです。

 

デジタル時代にカスタマーをファンにする勝負で勝つための最大の武器は、人(CSM)の力ではなく、データの力でカスタマー1人ひとりを知り尽くすことです。そしてそれを受け身でも先回りでもなく、予測して意図的に仕向けながらカスタマーへ成功を届けることがとても重要です。

 

カスタマーオペレーションという役割は米国でもまだ新しく、議論が始まったばかりです。しかし、その期待は高く、これから加速的に注目が集まることでしょう。

 

Gainsight社による、カスタマーオペレーションをテーマとしたインタビューからの学びに関する記事を以下に紹介します。米国での議論の雰囲気が理解できると思います。

 

注:Gainsight社の許可を頂き原文(一部)の和訳を紹介します。


 

業務効率を上げたいカスタマーサクセス組織がカスタマーオペレーションを始める

 

カスタマーオペレーションの担当者を初めておいたタイミングを尋ねたところ、「カスタマーサクセスマネジャー(以下、CSM)が5人程度で事業が急激に成長した時期」という回答がほとんどでした。

 

インタビューに協力くださった皆さんは、CSMと部門長の時間効率を大幅に改善するために新たなミッションをもつメンバーの必要性を感じたのだ、と口を揃えて言いました。

 

企業が大きくなるにつれ、新たなプロセスを導入し組織の基盤を担う専任者をおくことでより多くのカスタマーを担当できるスケーラブルなカスタマーサクセス組織へ進化させることが必要になります。

 

ある企業は、カスタマーオペレーションの必要性を感じた瞬間について話してくれました。

「以前は新規顧客の獲得を重視し、売上を最重要指標においていました。営業が新規契約のクロージングをするのを助けるCSMも中にはいたほどです。事業が成熟するにつれ、私たちは契約更新とカスタマーへ成功を届けることに軸足を移しました。それをスケーラブルな形で効率よく行う必要性に迫られ、カスタマーオペレーションのメンバーを迎え入れることにしたのです」

 

カスタマーオペレーションの役割は3つ

 

1. カスタマーサクセスの生産性向上・効率化:Enablement

カスタマーオペレーションの主な役割については、「CSMがより効果的かつ効率的に役割を果たせるようにすること」という回答が多くよせられました。

 

実際の業務は多岐にわたります。CSMが組織横断で複数のチームとコミュニケーションを取るためのプロセスを構築したり、新任CSMがスムーズに一人前になれるような入社後オンボーディングプランを導入したり、質の高いカスタマー体験を提供するために有用なテクノロジーを導入したり、チームメンバーを啓蒙したりなどです。

 

もしカスタマーオペレーションの担当者がいなければ、こういった業務はカスタマーサクセスチームのメンバー全員で分担せざるをえません。あるカスタマーオペレーションのマネジャーは言いました。

「私は以前はCSMでした。その時は、カスタマーへの料金提示や見積り書の作成を毎回自分でやっていました。CSMの誰もがこうしたタスクに時間を取られていました。私がカスタマーオペレーションを担当するようになってからは、こうしたプロセスは飛躍的に効率化されました」

 

2. 戦略立案:Strategy

カスタマーオペレーションは、カスタマーサクセス戦略をたてる上で重要な役割を担います。

 

インタビューから判明したことの1つに、初期のカスタマーオペレーション担当者は、カスタマーのセグメント分類やエンゲージメントモデル、カスタマーライフサイクルジャーニーを戦略的に検討する役割を担うという傾向です。

 

例えばある企業では、「ある特定のカスタマーセグメントに対して1対多型のコミュニケーション手段をどう活用していくのかを決定する役割」をオペレーションチームが担っていました。

 

ある企業では、チャーンの根本原因を探ってチャーン低減の解決方法を提案したり、チームの体制や報酬体系を最適化したりする、「戦略の検討に関わる役割」を担っていました。

 

こうした役割をもってカスタマーオペレーションのことを「チーフ・オブ・スタッフ(チーム統括)」と表現する人もいました。

 

3. レポーティング:Reporting & Metrics

組織内の関係各所に向けてレポートすることもカスタマーオペレーションの重要な役割です。

 

具体的には、CEOや役員陣に向けてカスタマーのヘルス状況を伝えたり、カスタマーサクセス部門長に対してCSMの担当分担や対応工数の状況を伝えたり、CSMに対して適切なカスタマー接点とそのタイミングに関する重要な情報を提供したり、などです。

 

ある企業は、レポーティングについて次のように述べました。

「データは事業運営において必要不可欠なものです。データがあれば業務を大幅に効率化できます。私たちは、あらゆる部門のより良い意思決定に繋がる取り組みをいくつも手掛けていますが、最も重要で効果的なのは、行動に即つながる分かりやすいデータをメンバーへ提供することです」

 

カスタマーオペレーション担当者のバックグラウンドは多様性に富む

 

カスタマーオペレーション人材は様々なバックグラウンドを持った人たちです。

 

ある企業では、営業部門で類似の役割を担当していた人材をカスタマーサクセス部門に異動しました。同社ではそもそも分析関係の業務が多く、カスタマーサクセス部門でも分析やレポーティングの役割を求められることが多いようです。

 

またある企業では、CSM経験者をアサインしました。彼らはCSMの役割や業務における重要な要改善点を深く理解しているため、とても良い効果を発揮します。

 

上記以外にも、営業部門からの異動や新卒採用からの着任など実に多様なバックグラウンドをもつ人たちがアサインされているようです。実務経験は5年以下の若い人材が大半でした。

「私たちは、営業部門で類似の役割を担当していた人材をアサインしました。分析思考があり業務遂行能力がある人、つまりカスタマーに関わるデータを読み解き、新しいプロセスを導入する方法を熟考できる人を求めたのです。最初に任せたのはGainsight社のサービスを管理することでしたが、早い段階でカスタマーのセグメント分類やエンゲージメントモデルの構築などへと役割を広げました」

 

カスタマーオペレーションが挑戦する最大の難題はチェンジマネジメント、そして同業者ベンチマーク

 

カスタマーオペレーションにとってチャレンジングな課題について尋ねると、「チェンジマネジメント」という回答が最も多くよせられました。

 

ある企業は、次のように述べています。

「私たちが導入しようとする新しいプロセスは、CSMの皆さんはたいていメリットを理解してくれるのですが、カスタマーサクセス部門以外の組織横断チームや開発部門、マーケティング部門などの理解をえるには大変苦労します。組織内の権限が弱い中で他部門を巻き込むことは非常に難しいです。私自身、たくさんの学びがありました」

 

別の企業は、次のように述べています。

「自分のような新参者にとって一番大変なのは、組織内の明確な権力がない中で業務を遂行することです。私は副社長など権力のある人をccに入れたりしたくないんです。あまり効果的なリーダーシップの発揮の仕方ではないと思っているからです」

 

もう1つ多くの声があった課題は、カスタマーオペレーションに関する業界のベンチマーク情報不足でした。「良いリテンション」や「良いアップセル」といえる具体的な数字は?とか、カスタマーサクセスマネジャー1人当りの担当アカウント件数や年間定期収益額はどのくらいが適正なのか?とか、カスタマーオペレーションはCSM何人に対し1人配置すべきか、その役割・報酬・キャリアプランは?などです。

 

カスタマーオペレーションに関する議論が渇望されている

最後に、カスタマーオペレーションは間違いなく今とても議論が求められているトピックの1つだと、多くの人が異口同音に言いました。誰も答えを見いだせていない疑問はまだ数多く、誰もが試行錯誤中です。

 

そこでGainsightは、今年11月にカスタマーサクセスオペレーションサミットを開催することにしました。私たちの調査からの発見や前進に向けた協業などの議論を深めたいと思っています。

 

(原文)

 

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