カスタマーサポート体験を根本から変える第3の波:「セルフサービス」

5月1週目に TSIA(Technology Service Industry Association)のイベント「TSW(Technology Service World)San Diego 2018」が開催されました。「テクノロジーを活用するサービス事業」な人々が対象なため、非常に幅広いトピックが議論されます。もちろんカスタマーサクセスも重要トピックの1つです。

 

そのTSWのキックオフ会議で紹介された「サービス事業者のチャレンジ(経営課題)トップ10」の1位は、なんと「セルフサービスのトレンド」でした(2位以下ほか詳細はこちら)。

 

この結果に、私は少なからず嬉しい衝撃を受けました。というのも私自身、セルフサービスは非常に重要だと思って注目しており、4月に登壇させてもらったカスタマーサクセスの世界最大イベント Pulse 2018では「日本人の会話嗜好性からセルフサービスはとても好まれる。セルフサービス、プラス、コミュニティとアドボカシーが最強のコンビネーションだ」と話したばかりだったからです。

 

世界が注目する「セルフサービス」。皆さんの思考を刺激する記事をどんどん紹介していこうと思います。

 

記念すべき1本目は… セルフサ―ビスと言えばこの人抜きに語ってはいけない!というアーロン・フルカソン氏の記事です。

 

アーロンさんは、マイクロソフト時代に、企業内に散在するドキュメンテーションを一元管理すれば画期的なサポート体験を提供できる!と確信し、2005年にMindTouch社を創業した、いわばセルフサービスのプロ中のプロです。実際お話しすると、豊富な知識やデータが彼の頭の中でも一元管理されてるのでは?と思うほど博識です。話すたびに貴重なアドバイスをくださり、個人的に大変尊敬しています。

 

そんなアーロンさんが、セルフサービスの動向と将来を見立てています。特に最後の「第3の波」はとても味わい深いですよ!

 

注:著者Aaron Fulkerson氏の許可を頂き原文の和訳を紹介します


 

セルフサービスへの需要を加速させている5大トレンド

 

この5年間、カスタマーサポート業界はルネッサンス期を迎えました。革新的な技術が次々と登場したことでサポート体験の質が大幅に向上し、その結果、更新率と顧客ローヤリティが強化されました。そんな中で 「セルフサービス」は、まさに嵐のような勢いで市場の拡大を大きく牽引してきた分野です。

 

今回は、セルフサービス市場を数千億円規模の市場価値に変えた5大トレンドをご紹介します。

 

1. 消費者の好みの変化

セルフサービスが興隆した理由の最たるは、消費者の嗜好性の変化です。しかしなぜか、この明白な事実はあまり注目を集めていません。

 

 

消費者の79%がセルフサービスの利用を好んでいます。カスタマーサポートが必要な人にとってセルフサービスは最も好まれる手段です

 

「ヘルプ」が必要な時にあなたならどうするか考えてみてください。コンタクトセンターに電話しますか? それともサポート依頼を提出しますか? コールセンターとチャットしますか? いつも使う検索エンジンやベンダー会社のWebサイトをチェックしたけど解決策が見つからなくて仕方なくサポートへ問い合わせていませんか?

 

大手調査会社(Gartner、Forresterなど)によると、セルフサービスは過去5年間に最も急速に成長した分野であり、過去3年で最も優先順位の高い解決手段になりました。

 

個人的にはセルフサービスを望まない残り21%がどんな人なのかに興味があります。私はそんな人にまだ出会ったことがないからです。

 

2.エンゲージメントモデルの変化

カスタマーと関係を持ち続け、カスタマーと直接やり取りし続ける企業こそが成功して生き残る、という傾向がハッキリしています。

 

多くの企業はこれまで、分散型の販売ネットワーク(訳者注:卸や流通・小売を介した販売モデル)を築いてきました。この分散型販売ネットワークは、昔は最大の強みでしたが、今は最大の弱みになっています。なぜなら、デジタル時代はこの分散型販売ネットワークこそが、企業がカスタマーと直接コンタクトする上での障害となるからです。

 

Amazon、Tesla、TUI Travel、Apple、Core Power Yogaのような、既存勢力を破壊してきた新興ブランドの共通点は何だと思いますか? これらカテゴリーキラーなブランドの強みは、既存カスタマーとのリレーション基盤を築いている点です。さらに重要なのは、自社プロダクトを改善するために既存カスタマーから学ぶモデルを構築している点です。

 

 

現在、SaaS(Software-as-a-Service)事業はオンプレ事業よりずっと高い評価を受けます。SaaSベンダーは既存カスタマーとのリレーション基盤があるため、彼らと直接繋がる接点をうまく活用することで、カスタマーからの学びをテコにプロダクトやサービスを磨いていくことができるからです。

 

間接的な流通ネットワーク経由でモノを売る製造業(基本的に製造業はみなそうだと思いますが)にとり、自社プロダクトがAmazon.comでポチっとされた瞬間が、市場との接点を失うタイミングです。

 

現在、市場で成功して生き残れるのは、自社カスタマーと繋がる関係を築いている企業です。この新時代の現実が広く浸透するにつれ、カスタマーと直接繋がる事業が更に増えることでしょう。

 

3.カスタマーサクセスがサポートを飲み込んだ

ここ数年、カスタマーサクセスを統括する責任者の元にカスタマーサポート機能が統合されるケースが急増しています。

 

サポートチームにとって重要な指標は何だと思いますか? ー「コスト。それから… 顧客満足度!」と答えたあなたは、最も一般的な指標を言ってみたにすぎず、実は最新トレンドをフォローできていません。

 

今では、契約更新とアップセルが、コストよりもずっと重要になっています。なぜなら、サブスクリプションモデルを採用する企業が増えているためです。サブスクリプションモデルにおいて、契約更新やアップセルを測る指標は、コストを測る指標よりもずっと高い頻度で活用されます。

 

万一あなたの事業がサブスクリプションモデルではなく、かつカスタマーサクセスを実行に移す予定も今後3年以上ないなら、きっと今から5〜8年内に撤退を余儀なくされことでしょう。

 

4.インターフェースとチャネルの変化

現在、Google検索に使われる主要チャネルはモバイルデバイスです。

 

にもかかわらず、いまだにセルフサービスを複数のデバイス間でスムーズに利用することができず、カスタマー体験に大いなる改善余地を抱える企業が大半です。そのような企業は、早急に自分たちのセルフサービスのレベルをアップグレードする必要があります。

 

最も深刻な例は、オンラインセルフサービスのために公開しているコンテンツを、印刷を目的としたフォーマットであるPDFファイルで提供する企業が今も存在することです。

 

モバイル以外にも、斬新なインターフェースを持つ新型のチャンネルが増えています。音声エージェントのAlexa、Siri、Cortanaのほか、さまざまなチャットインターフェイスなど、かつて存在しなかった新しいタイプの会話型インターフェイスが次々登場しています。

 

インターネットに接続されたサーモスタットや台所用品など、インターネット経由で動力を得る小型デバイスは既に利用可能です。近い将来には、空間環境でさえ、拡張現実(AR)を重ねることで有用な情報が得られるようになるでしょう。

 

こういった新しいカスタマー体験が現実になった時には、今よりも数倍きめ細かいヘルプニーズに対応できるセルフサービスコンテンツが必須です。つまり、より細分化され、分かりやすく構造化され、必要な時にミリ秒単位で配信されるセルフサービスのコンテンツです。

 

5.人工知能(AI)と機械学習の浸透

自動化の活用余地が最も大きい分野はカスタマーサポートです。なぜなら、機械学習と人工知能(AI)を活用することのリスクが最も低く、リターンが最も大きい機会領域だからです。

 

ハッキリ言います。デジタルテクノロジーによってカスタマーサポート担当者の仕事は自動化されます。でも、心配しないでください。彼らには、より意義の高い、能動的に行動するカスタマーサクセスの仕事が待っています。

 

カスタマーサポート業務の自動化競争はとっくに進行中です。テクノロジーベンダーはこぞって、これまで人力で対応してきたサポートチャネルを置き換える、より賢い自動化システムを構築しています。サポート担当者が対応していた電話、電子メール、チャットなどのチャネルは、今や最も好まれないチャネルになりました。そのようなチャネルの、カスタマー対話に占める割合は今やたった3%未満です。

 

最も効果的なコンテンツは、サポート担当者が問い合わせ内容を踏まえて最適だと判断したコンテンツです。が故に、セルフサービスは、人工知能(AI)と機械学習を使った自動化で大きな利益を期待できる金鉱です。なぜなら、サポート体験を最適化するアルゴリズムに必要な膨大なサンプルが提供可能だからです。

 

さらに、セルフサービスを利用しようとも、サポート担当者を利用しようとも、同じコンテンツが活用される必要があることにも適しています。

 

企業は、サポートドキュメントとプロダクトドキュメントを「スマートコンテンツ」に変換することで、最適化の好循環を回すことができます。究極的なセルフサービスのカスタマー体験は、想像をはるかに超える成果をカスタマーが自動的に受け取ることのできるカスタマーサポートです。

 

そのレベルになると、企業自身もカスタマーサポートから、カスタマーやバイヤーに関する目うろこな洞察を得られるようになります。

 

カスタマーサポート分野のイノベーションの「第3の波」

 

20年前、カスタマーサポート分野におけるイノベーションの「第1の波」が、事業プロセスを自動化するソフトウェアの登場と共に生まれました。結果、サポート担当者の仕事から単調な繰り返し作業が消えました。

 

「第2の波」はクラウドへのシフトと共に生まれました。結果、ハードウェアを購入したり、オンプレミスのソフトウェアを保守する必要がなくなりました。これらの波と根本的に異なるのが「第3の波」です。

 

カスタマーサポートイノベーションの「第3の波」は、過去に経験のないセルフエデュケーションを促す画期的なラーニングシステムと共に生まれます。

 

このセルフラーニング(自己学習)システムが画期的なのは、カスタマーがプロダクトを利用中にシームレスなカスタマー体験として必要なサポート情報を受け取るため「サポートを受けている」ことすら意識せずに自然とセルフ教育のプロセスが流れるためです。

 

この波は既に現実に起きています。プロダクト内で、あるいはカスタマージャーニーの要所において、“チョコチョコ学ぶ” セルフラーニングの仕組みは、機械学習によってカスタマー毎に最適化され、個別化され、自然な形で提供されます

 

このように完全に自動化されたサポート体験を提供できれば、カスタマーはより多くの成果を手に入れられます。更にあなたの会社も、カスタマーサクセス、契約更新、およびアップセルが成功する “この瞬間” をより正確に把握し分析できるため、あなたのカスタマーをより深く理解できるようになります。

 

やがて、セルフサービスはあらゆる会社が実践するようになるでしょう。セルフサービスはあらゆる会社にとって、カスタマーを惹きつけ、プロダクトをどう改善したらシェアアップに繋がるかをカスタマーから学ぶための主要ドライバーになるでしょう。

 

(原文)

 

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