世界からみた日本のカスタマーサクセス:グローバルベンチマーク調査 2018速報

by 弘子ラザヴィ


カスタマーサクセス パフォーマンス指標™ ベンチマーク調査2018 に参加下さった皆さま、どうも有難うございます!


2018年9月以降、約2か月強にわたり回答を頂戴し、お陰様で約200社が参加してくださいました。先日、分析を担当するアンドレアス氏から速報が届きました。本稿では、カスタマーサクセスパフォーマンス指標™とは何か、本調査から明らかになった日本企業の現状と海外企業との比較、そして改善に向けた提案について速報をお伝えします!


CSRI社プリンシパルコンサルタントで数学博士でもあるアンドレアス氏


なお回答にメールアドレスを記入くださった方には、パーソナライズされた結果と改善提案を含む簡易レポートを年明け以降に順次送付致す予定です。いま暫くお待ち下さい。


カスタマーサクセスパフォーマンス指標™ ベンチマーク調査とは


カスタマーサクセス パフォーマンス指標™ ベンチマーク調査2018 とは、カスタマーサクセスを推進する企業が参加するグローバル調査です。生まれたてスタートアップから歴史ある大企業まで、あらゆる業界のカスタマーサクセスの現状に関するデータを収集・分析することで、カスタマーサクセスの「いま」を明らかにすることが目的です。


同調査は The Success League社と、Customer Success Japanを運営するSuccess Lab社のパートナーシップに基づく取り組みです。グローバル調査の一環としてデータを収集・分析することで、世界の中の日本について理解を深めると共に、日本企業にとって特に重要な提言を具体化し、その内容を世界へ発信することを目的として日本は今年初めて参加しました。


カスタマーサクセス パフォーマンス指標™ とは 


カスタマーサクセス パフォーマンス指標™ とは、各社のカスタマーサクセスを8軸に基づき評価する手法です。個社の実務を業界リーディングカンパニーによる基準値と軸毎に比較することで、現在の立ち位置と今後の改善領域を理解することができます。


同手法は、The Success League社の創業者であるクリスティン氏と、CSRI社プリンシパルコンサルタントで数学博士でもあるアンドレアス氏が、スタートアップからAppleやSAPなどの大企業に至るさまざまな企業で実務経験やコンサルティング経験を重ねる中で、「カスタマー基盤を維持・拡充して利益ある売上拡大に繋げるには何をすべきか?」という普遍の問へ解を見出す手段として開発されました。  


カスタマーサクセス パフォーマンス指標™(CSPI)は、カスタマーサクセスに成功するために不可欠な以下8つの軸に基づくフレームワークです:


1. アライメント Alignment
カスタマーサクセスの組織における位置づけ、全社の業務プロセス・運営方針に及ぼす影響度合い


2. チーム Team
カスタマーサクセスチームの構造と役割、提供するサービスや能力


3. セグメンテーション Segmentation
カスタマー基盤を理解・観察する視点、その目的や活用度合い


4. プレイブック Playbook
カスタマーサクセスの業務品質を一定以上に保つ手続き書の存在、その成果への貢献度合い


5. リソース Resources
カスタマーが成功するために役に立つ情報や手段の提供度合い、その提供体制


6. オンボーディング On-boarding
カスタマーがプロダクトを最大限に活用できるよう支援する方法、提供しているセルフサービス手段


7. リレーション Relationship
カスタマーとのエンゲージメントモデル(接触する頻度と目的)


8. アウトカム Outcome
カスタマーへ価値をもたす仕組みの確立度合い(成果の測定、評価する基準値、対策標準の定義)


各軸ごとに、リテンション率と売上成長率を上げるのに必要な基準値、加えて、さらに高いネット収益リテンション率(以下「NRR」)に繋がる基準値が設定されています。各軸の最高値は100ポイントで、理論上は合計800ポイントが達成可能です。



日本企業の現状(速報)


図1は日本から参加された企業の現状を8軸で表し、日本を除く世界の現状と比較したものです。オレンジ線が日本、青線は世界(日本は除く)です。


図1:日本のカスタマーサクセスの現状:2018年11月末現在速報


本調査に参加された企業の現状データから観察されたポイントは以下 5点です:


(1) 日本企業のネット収益リテンション率(NRR)は平均109%

米国企業のベンチマーク平均(117%)に比べ、8%低いです。なお参考まで、未上場SaaS企業の平均(101%)よりは8%高いです。


(2) 日本企業のパフォーマンス指標は平均289ポイント

他国からの参加企業の平均330ポイントに比べ、41ポイント低いです。


上述2点は、同パフォーマンス指標のスコアが高いこととNRRが高いこととが密接にリンクする可能性を示唆しています。本調査に参加くださった日本企業の平均スコアは他国の参加企業に比べ全般的に低いことから、既存カスタマーからの収益を維持・拡大するという点で改善余地があることが伺えます。

日本企業がこのギャップを埋めて世界レベルに追いつくためのポイントを以下にご紹介します。



日本企業の改善領域案(速報)


(3) チーム Team

特定領域の高度な専門性をもつエキスパート人材を増やす


日本企業のカスタマーサクセスチームは、導入、オンボーディング、サポート、アカウント管理、リニューアル、アップセルなどなど、他国の企業に比べ相対的にたいへん幅広い役割を担いながら多様なサービスをカスタマーへ提供している、という特徴が本調査から浮かび上がりました。背景には、より幅広い業務をバランスよくこなせるゼネラリスト志向が強いという日本企業の価値観が存在し、それがよい意味でこの「チーム」軸の高スコアに繋がったものと推測します。


一方の欧米企業では、そもそも1人ひとりの職務内容が明快に特定/限定される傾向が強く、結果として特定領域における深い専門性を持つ人材がいろいろいる、多様性高いスペシャリスト集団を志向する価値観に基づいてカスタマーサクセスチームが編成されます。


ここで、ゼネラリスト集団がよいのか、それともスペシャリスト集団がよいのか、といった単純な二元論の是非を議論することには意味がありません。重要なのは、ゼネラリストを志向する日本企業の価値観を前提とした時に、さらにカスタマーサクセスチームの能力を上げる余地は何かを考えることです。


1つの改善案として、より専門性の高いプロダクト知識やトラブルシューティングスキルを持っていたり、導入方法や構成方法などを熟知していたりする「特定領域のエキスパート(Subject Matter Expert;SME)」をカスタマーサクセスチーム内に持つ・増やす方向性を提案します。そうすることで、カスタマーサクセスマネージャーはカスタマーとの全般的な関係構築に集中し、特定の専門性が必要な時はエキスパートの力を借りることができます。


(4) リレーションシップ Relationship

カスタマーの成果実現パートナーとしての関係構築を追求する


リレーションシップ軸のスコアが非常に高い企業では、ゴールの視座を「自社プロダクトの利用促進」に留めず、その先にある「カスタマーの業績そのものの改善と成長(即ち、成功)」に置き、カスタマー各社と協働してそれに全力を尽くします。契約前の営業時からカスタマーの望む成果について議論を始め、契約後はそれをカスタマーサクセスチームへ引き継ぎ、同チームはその実現に責任をもってゴールに対する実績進捗率をモニタリングします。


カスタマーの事業や目標も時の経過と共に変化するため、一度合意したゴールでも定期的にレビューして再合意し、同時に自社のゴールとの整合性も確認することが非常に重要です。カスタマーのゴールと自社のゴールが近ければ近いほど、互いの関係性は堅固になります。強い信頼関係を築くことができれば、カスタマーはあなたに対して開襟し、あなたのプロダクトを推薦する企業として事例共有してくれるでしょう。


リレーションシップ軸を上げる改善案として、カスタマー企業の経営レベル・管理職レベルそれぞれの利害関係者やエンドユーザー、その他関係各位と接触する頻度および手段について、先方と議論しながら合意し、彼らのニーズに沿ったカスタマージャーニーをまずきちんと作成すること提案します。そうすることがカスタマーの成果実現パートナーとしての関係を構築する第一歩になるためです。


(5) アウトカム Outcome

カスタマーサクセスのゴールを「チャーン防止」でも「エクスパンション」でもなく、「カスタマーの成功実現」へ引き上げる


NRRが非常に高い企業では、カスタマーの成功に紐づく目標達成の支援、さらに目標以上の成果実現に向け愚直にまい進しています。NRRの高い企業のアウトカム軸は、他の企業に比べとても高いスコアを記録しています。彼らは、カスタマーが定義した成果目標を踏まえ、その実績を測定するための指標を定義し、良否判断の基準値をもち、必要な対策を組織的に講じています。


NRRが非常に高い企業は、カスタマーの会社自体や主要関係者がジャーニー上で時と共に変化することを踏まえて、カスタマーの目標に合わせたアカウント計画を作っています。そうすることで、カスタマーから大切な戦略パートナーとみなされ、結果として、自社プロダクトのファンが増え、自社の収益が拡大し、さらに影響力ある推薦コメントなどの貴重な見返りを手に入れられるのです。


アウトカム軸を上げるための改善案として、リレーション軸を上げる対策、すなわち「カスタマーのニーズに沿ったカスタマージャーニーをまず作成」した上で、さらに各ジャーニーでの成果目標の進捗を測る指標を定義し、実績を測定していくことを提案します。


さいごに


今回の調査から、日本におけるカスタマーサクセス実務の実態はとても多様性に富んでいることが判明しました。NRRが非常に高いリーダー企業におけるカスタマーサクセス実務のレベルは、米国企業をはじめとする世界のリーダー企業の実務レベルと全く同格です。


上述した3つの改善案が、世界のリーダー企業と比べてギャップがあるすべての日本企業にとって、ギャップを解消し、NRRを上げるのに大いに役立つことを期待します。


(以上)

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