G-ガイド #10 カスタマーサクセスソリューションの選び方(前編)

Gainsight社の豊富な資料の中からカスタマーサクセス初心者に向けたガイド “The Essential Guide” の和訳版を「G-ガイド」と名付けてシリーズでお届けします。

 

#01 カスタマーサクセスとは
#02 チャーンとは
#03 カスタマーサクセスの指標とは
#04 カスタマーライフサイクルとは
#05 カスタマーサクセス予算の立て方
#06 ハイタッチなカスタマーサクセス(前編)
#06 ハイタッチなカスタマーサクセス(後編)
#07 四半期ビジネスレビュー(QBR)とは
#08 パートナーサクセスとは
#09 VoC (Voice of Customer)とは
#10 カスタマーサクセスソリューションの選び方(前編) ←今回これ

 

注:Gainsight社の許可を頂き原文の和訳を紹介します。


第1章 なぜカスタマーサクセスが重要なのか

 

カスタマーが必要十分な知識を持たず、実用性の薄いプロダクトが売れたのは過去の話です。大規模でハードウェア・デマンディングなソフトウェアを作り、長期契約と莫大な先行投資でカスタマーを縛りつけることはもうできません。代わりに浸透しつつある定期収益モデルは、より少ない初期費用とミニマムな契約内容が求めらます。

 

あなたの事業にとり、これは何を意味するのでしょうか?

 

無料トライアル、オンラインのサインアップ、月額課金などが普及し、カスタマーがあなたのプロダクトを試す敷居はぐっと下がりました。同時に、カスタマーが利用を中止する敷居も低くなりました。カスタマーが支払いを続けてくれるのは、あなたが価値を提供している間だけです。

 

たとえ複数年契約を結んでいたとしても、あなたのサービスやプロダクトに価値を見出さなければ、カスタマーは契約を更新しないでしょうし、誰かにお勧めすることもないでしょう。

 

カスタマーはかつてないほどテクノロジーに精通しています。テクノロジーの価値は ソフトウェアやアプリケーションそのものの価値だけでなく、実装やアダプションの成否に大きく左右されると皆知っています。

 

つまり、ベンダーであるあなたに求められているのは、サービスやプロダクトの使用感がよい、価値が高い、だけでなく、カスタマーの成功そのものに対しどれだけ配慮しているか、なのです。

 

今日、購買活動の主導権を握るのはカスタマーです。ベンダーではありません。

 

このマクロトレンドの中で、テクノロジー企業やベンダーなどのIT事業者は、カスタマーサクセスに特化したチームやプログラムを擁するようになりました。

 

カスタマーサクセスの考え方はとてもシンプルです。それは「カスタマーを成功に導けば、自社の成功は後から必ずついてくる」です。

 

具体的にカスタマーサクセスは:

 

1.チャーンを減らしアップセルを増やします
カスタマーの成功に焦点をあててデータを把握することで:
・問題を抱えるカスタマーを早期に発見し、彼らが助けを必要とする前にサポートすることができ、かつ
・アップセル、クロスセルの機会を知ることができます

 

2. ライフタイムバリューと株主価値を向上させます
リスクを軽減し問題を未然に防ぐだけでなく、収益増加にも貢献します。Matrix Partners社のデヴィッド・スコック氏が引用した調査によると、チャーンが2%減少またはアップセルが2%増加すると、株主の利益は多面的に20~28%増えるそうです

 

3. カスタマーを常に中心に据える企業になります
カスタマーサクセスが戦略に反映されれば、 あらゆる部門や組織がカスタマーと彼らのニーズにそうよう構成されます。即ち正しく推進されれば、カスタマーサクセスは企業の目となり耳となります。

 

第2章 なぜカスタマーサクセスのソリューションが必要なのか

 

マーケティング部門がMarketoのようなマーケティング自動化ソフトウェアを使い、営業部門がSalesForceに代表されるCRMシステムを活用しているように、カスタマーサクセス部門にもカスタマーサクセスを評価、分析し、業務を自動化するシステムが必須です。

 

カスタマーサクセスを支えるソリューション/ システムの主要な機能は以下の3点です:

 

1. カスタマー個社のヘルス評価

以下のような要因に基づいてカスタマー各社との関係性の健全度を見える化します
・プロダクトの利用状況、アダプション

・ コミュニティーインタラクション

・サポート・アクティビティ

・請求書に対する支払い状況

・アンケートへの回答

・マーケティングインタラクション

 

2. ミクロ・マクロ情報分析

収集した情報の詳細分析をすることで、カスタマーの傾向値・パターンを提示します
例えば、システムを通してチャーンの予兆や良好なカスタマーの特性を知ることができます

 

3. 契約更新、アップセル、カスタマーへ提供する価値/成功の最大化
あらゆるカスタマーに対し、正しいタイミングで、正しいアクションがとれるよう、最適な機会を見極めて提案します

 

こういったテクノロジーの活用なくして本質的なカスタマーサクセスは成し得ません。有効なソリューションを活用し有用なデータを蓄積してこそ、有益なビジネス・インテリジェンスが入手でき、包括的な戦略が策定できるのです。

 

 

第3章 採用すべきソリューションに必要なシステム要件はなにか

 

前章では、カスタマーサクセスがなぜ重要なのか・どういう利益をもたらすのか、そしてなぜカスタマーサクセスを効果的に推進するためにテクノロジーの導入がなぜ不可欠なのか、を説明しました。

 

本章からは、カスタマーサクセスのソリューションとしてどのような選択肢があるのか見ていきます。まずは、あなたのシステム要件をピンポイントで押さえる必要があります。

 

タッチモデルを判断する

 

“タッチモデル” とは、個々のカスタマーに対し企業が費やせる労力の度合いを表します。タッチモデルは3階層の分類で、通常、階層が高いほどカスタマーへの価値も高くなります。

 

ハイタッチ: 年次の定期収益10万ドル超

 

カスタマーのライフタイムバリューが高い企業は「ハイタッチ」なアプローチをとることが多いです。

 

この場合、カスタマーサクセスマネジャー1人が通常5~20人程度のカスタマーを担当します。彼らは担当カスタマーの詳細を把握し、頻繁にコミュニケーションをとります。カスタマーと会う前には、 適切なコンサルティングができるように、カスタマーサクセスのソリューションを利用して事前準備を入念にします。

 

今日のソフトウェア・インテリジェンスのおかげで、どのタイミングでどういった内容について話せばよいのか適切に把握できます。結果、カスタマーサクセスマネジャーは、カスタマー各社の健全度に基づき、再現性高くかつ定量的な形での報告を展開できます。

 

ロータッチ: 年次の定期収益5千~10万ドル

 

カスタマーのライフタイムバリューが中規模な企業は「ロータッチ」アプローチを選ぶ傾向があります。

 

この場合、カスタマーサクセスマネジャー1人が50~200人のカスタマーを担当します。実際、彼らは全カスタマーと常にやり取りするのでなく「正しいタイミング」でコミュニケーションをとります。

 

カスタマーサクセスのソリューションを活用し、どのカスタマーに、どのタイミングで、どのようなメッセージを伝え、どのようなアプローチをとるかを判断します。例えば、あるカスタマーの契約更新時には、購入ずみモジュールの中に未使用のものがあれば、システムマネジャーにアラートを送信し、同カスタマーに何を推奨すべきか提案を求めます。

 

テックタッチ: 年次の定期収益100~5千ドル

 

大多数の企業のケースです。人をつぎ込むアプローチは決して実践可能でなく、経済的にも正しいと言えません。

 

カスタマーサクセスマネジャーは1人で数百、数千人のカスタマーを管理します。

 

人数があまりに多い場合、特定のマネジャーを紐づけないこともあります。その場合、マーケティング部門がマーケティング自動化ソフトウェアを使い「ナーチャリング」メールを見込み客に一斉送信するのと同じ手法を使います。即ち、カスタマーサクセスのソリューションに蓄積されあデータに基づき、パーソナライズ/ 自動化された手法を使ってカスタマーとコミュニケーションをとるのです。

 

例えば、まだプロダクトを使ったことのないカスタマーに対し豊富なトレーニング資料が満載のメールを一斉送信するなどです。

 

なおテックモデルを採用している企業では通常、マーケティング自動化システムとカスタマーサクセスソフトウェアが連携しています。

 

現在と未来の成長ステージを理解する

 

タッチモデルの階層を理解した次は、事業の成長ステージに応じそれがどう変遷していくのかを明確にしましょう。

 

ステージ1 導入期/アダプション(収益1~5百万ドル)

 

設立したばかりの会社がいきなり多くの契約更新を予定することはまずありません。特に年間契約や複数年契約の場合はそうです。

 

従い、ステージ1にある企業のカスタマーサクセスの目的は、リテンションやアップセルを上げことでなく、とにかくプロダクトを使ってもらうこと、加えてその価値を理解してもらうことです。この点に関し、カスタマーサクセスのソリューションは、どのカスタマーがプロダクトを有効に活用し・難しさを感じているのか、または全くアダプトできずにいるのかを赤裸々にしてくれます。

 

ステージ2 揺籃期/リテンション(収益5百万~2千万ドル)

 

カスタマーを契約更新タイミングまで囲い込むことに成功したなら、次はチャーン防止、ロイヤルティ最大化、ライフタイムバリュー増加に重点をシフトする必要があります。この点に関し、カスタマーサクセスのソリューションは、より積極的に契約更新やリテンションのリスクを判別し、適切な対策と納期を提示してくれます。

 

ステージ3 発展期/エクスパンション(収益2千万~1億ドル)

 

事業成長を加速させ、IPOなどのエグジットに向けた準備に着手したい企業は通常、複数プロダクトラインを導入し始めたり、時には「land and expand」アプロ―チを採用します。

 

このステージでは、カスタマーサクセス部門は事業拡大機会を発見することに焦点をあてる必要があります。この点に関し、カスタマーサクセスのソリューションは以下の点で活用できます:

 

1. アップセル、クロスセルについて、どのカスタマーに・いつ話を切り出すべきか判断する
2. どのようなアプロ―チ・どのようなメッセージを発信すべきか判断する

 

ステージ4 成熟期/オプティマイゼーション(収益1億~10億ドル)

 

この段階の事業はすでに成熟しており、費用対効果の高い方法でスケールさせるため、プロセスの自動化と、カスタマーサクセスのソリューションにより重点を置くようになります。

 

具体的には以下のようなことです:
・カスタマーサクセスマネジャー1人当たりの担当カスタマー数を増やす
または
・サポート部門やマーケティング自動化システムの責任範囲を広げる

 

ステージ5 変革期/トランスフォーメーション(収益10億ドル超)

 

あらゆる事業はこのステージを目指しています。即ち、企業とカスタマー双方にとり有益な戦略を立て、カスタマーサクセスが長期的なソリューションになりうる大きな可能性を秘めるステージです。

 

このステージにいるB2BのSaaS企業の最良の例はSalesforce社でしょう。彼らのカスタマーは Salesforce社を真の戦略的パートナーと位置づけ、自身の事業にとって必要不可欠な存在と認識しています。

 

しかし、SaaS業界以外に目を向けると、フォーチュン500企業や同規模の企業は既にこの成長ステージに入っています。SaaSであろうとなかろうと、このステージに達した企業がカスタマーサクセスのソリューションを活用したなら、カスタマーのライフサイクルの全フェーズにわたる付加価値を生み出すことができるはずです。

 

求めるシステム性能を判断する

 

タッチモデルと成長ステージを理解した次は、いよいよ具体的にどのようなソリューションが必要かを考え、決定するステップです。

 

以下の質問への答えを用意しましょう:

 

ユーザビリティ
・ユーザはどのようにシステムにアクセスすることを望んでいますか
・ユーザはスタンドアロン型のアプリケーションにログインすることを望んでいますか。それとも、SalesforceなどのCRMを含む運用中のシステムからアクセスすることを望んでいますか
・ユーザはデータやレポートへのアクセスを望んでいますか
・アクティビティを管理するため、カスタマーがワークフローシステムを導入することも希望しますか

 

統合性
・どのシステムとカスタマーサクセス・ソリューションを連携する必要がありますか
(あなたの会社が利用しているCRM、サポート、サービス、マーケティング、請求、HRおよびコミュニティーシステムについて考えてみてください)
・どのように利用状況のデータを取得する予定ですか
・アプリケーションをコーディングしたいですか、それとも運用中のデータベースからカスタマーサクセス・ソフトウェアにデータを同期させたいですか

 

分析性
・カスタマーサクセス・システムにどのようなタイプの分析を期待しますか
・利用状況およびアダプションについてのレポートは必要ですか
・カスタマーをセグメント化したいですか
・チャーンおよびアップセルの機会を分析したいですか

 

データサイエンス
・カスタマーサクセス・ソリューションで得られたデータサイエンスや予測分析リソースを活用したいですか、それとも良好なカスタマーおよびチャーンが発生する原因をすでに把握できていますか

 

セキュリティ
・カスタマーサクセス・ソリューションは、カスタマーとその行動を追跡、記録し、非常に有益で機密性の高いデータを蓄積します。このようなデータの保管、収集に対しどのようなセキュリティ要件が必須ですか

 

拡張性
・カスタマーサクセス・ソリューションは複数の部門が活用できますが、どの部門がどのレベルで利用したいですか
・システムにどのようなスケーリングを期待しますか
・運用中のCRMシステムの全データと容易に連携させる必要がありますか
・オープンAPIまたは他システムとの双方向の統合が必要ですか

 

必要な機能を判断する

 

下記は、成長ステージとタッチモデルに基づいた最も一般的なカスタマーサクセスのソリューション機能リストです。

 

前述の内容を踏まえ、あなたの企業がどこと合致するか検討してみてください。複数の機能を組み合わせてカスタマイズしたソリューションを採用するのも一案です。

 

導入期(アダプション)

 

ハイタッチ  360度全方位的なカスタマーヘルススコアの管理
ロータッチ  アダプションと満足度の追跡、記録
ノータッチ  マーケティング自動化プラットフォームとの連携

 

揺籃期(リテンション)

 

ハイタッチ  カスタマーとのコミュニケーションに対するプロアクティブな管理
ロータッチ  チャーンおよび契約更新時期を知らせるアラートの通知と対応集の表示
ノータッチ  メール・キャンペーンのトリガーとなるアラートの通知

 

発展期(エクスパンション)

 

ハイタッチ  クライアントのベンチマークを設定
ロータッチ  アップセルを知らせるアラートの通知と対応集の表示
ノータッチ  メール・キャンペーンのトリガーとなるアラートの通知

 

成熟期(オプティマイゼーション)

 

ハイタッチ  四半期ごとのビジネスレビュー自動生成
ロータッチ  ワークフローおよびチーム管理
ノータッチ  リテンション分析およびアップセルの傾向分析

 

カスタマーサクセスのソリューションをどう選択すべきか

 

あなたの企業は唯一無二であり、カスタマーもまた然りです。多くのテクノロジー企業と同様、あなたの企業にも社内IT部門やエンジニアリング部門があります。

 

「カスタマーサクセスのソリューションが大切なのは分かった。ならば自社開発すればよい」と思うかもしれません。自社開発すれば、開発者は運用中のビジネス・インテリジェンス・プラットフォームに同システムを乗せることができ、更にCRMに組み込むこともできるでしょう。

 

でもちょっと待ってください。「特注品」を作ることは必ずしも正解ではありません。その理由を次章でご説明します。

 

(原文)


 

続きは「G-ガイド #10 カスタマーサクセスソリューションの選び方(後編)」をぜひご覧ください!
– 第4章 なぜカスタマーサクセスのソリューションを自社開発してはいけないのか

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